2026.03.10 中央区エリア特集, 住まいの情報
監修:株式会社nodomaru 代表取締役 森田健宏 宅地建物取引士
宅地建物取引業 東京都知事(02)第104535号 / 全日本不動産協会 所属
「中央区でオフィスを借りる初期費用、いったいいくら?」
事業用テナントの初期費用は、居住用の2.4〜5倍。賃料20万円の物件でも240〜400万円、賃料100万円クラスなら2,000万円を超えるのが中央区の現実です。
本記事では、当社(nodomaru)の不動産仲介担当が、中央区を中心とした事業用テナントの初期費用の完全内訳・坪数別シミュレーション・日商保など保証会社による圧縮術を、業界慣行と法的根拠を踏まえて正直にお伝えします。
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中央区の事業用テナント市場は、2026年に入っても26ヶ月連続で募集賃料が上昇(三鬼商事「オフィスマーケット」2026年3月)。都心5区平均は坪22,454円/月(共益費込み)、空室率2.20%の需給逼迫局面が続いています。
事業用の初期費用が居住用より圧倒的に高い理由は、構造的に3点に集約されます。
6ヶ月(未収リスク)+6ヶ月(原状回復)=12ヶ月。これが事業用保証金の理論値の正体です。
| 区 | 中小ビル中心レンジ | 高グレード代表値 | 主な高賃料エリア |
|---|---|---|---|
| 中央区 | 坪15,000〜25,000円 | 坪50,000〜69,000円 | 日本橋・京橋・八重洲・銀座 |
| 千代田区 | 坪17,000〜26,000円 | 坪42,000〜52,000円 | 丸の内・大手町・有楽町 |
| 港区 | 坪16,000〜31,000円 | 坪34,000〜42,000円 | 六本木・麻布・虎ノ門 |
中央区は日本橋・八重洲のハイグレードで坪5〜7万円に達する一方、浜町・小伝馬町・東日本橋では坪1.5〜2万円で出ます。区内格差が極端なので、「中央区相場」を一括りにせず、エリアを区別して見るのが現場の鉄則です。
規模で明確に階層化されます。
中央区銀座・日本橋・京橋の新築ハイグレードでは20ヶ月超も実在。本記事では中央区中堅オフィスの標準=10ヶ月を採用してシミュレーションします。
加えて見落としやすいのが償却(敷引)特約。解約時に保証金から無条件で差し引かれる金額で、保証金の10〜20%、または賃料1〜2ヶ月分が相場。最高裁2011年3月24日判決で「高額すぎなければ有効」と判示されており、中小ビルでは依然として広く付帯されています。
なお、保証金は「預かり金」としての性格を持ち、解約時には(償却分・原状回復費用を除き)借主に返還されるものです。貸主にとっては礼金や賃料減額のような「売上の毀損」ではなく、あくまでリスクヘッジ目的の担保。このため、礼金や賃料の減額よりも交渉に応じてもらえる余地が大きい項目でもあります(詳細は第8章⑥で解説)。
事業用礼金は賃料1〜3ヶ月分(典型2ヶ月)が業界慣行。法的定義はなく地域慣習に過ぎないため、近年「礼金ゼロ」物件が増加しています。
背景は、貸主が一度賃料を下げると上げにくいため、値下げではなくフリーレントや礼金ゼロでテナントを誘致する選好にあります。ただし2025〜2026年は需給逼迫で大手系ビルの礼金カット交渉は難化しており、ゼロ条件は築古中小ビルに偏在しています。
宅地建物取引業法第46条と昭和45年建設省告示第1552号で定められており、貸借の媒介で貸主・借主双方から受領できる報酬の合計上限は借賃の1.1ヶ月分(消費税10%込み)。
居住用は依頼者一方から0.55ヶ月分が原則ですが、事業用・店舗・宅地は承諾不要で一方から1.1ヶ月分まで受領可能という点が決定的に異なります。
家賃の翌月分前払いが標準。契約時には「契約月の日割り分」+「翌月分1ヶ月」を同時納付するのが一般的。共益費・管理費も同様に前払いです。
事業用では火災・落雷・破裂・風水災・盗難・施設賠償・休業損失を包括する店舗総合保険または企業財産総合保険への加入が事実上必須。補償の柱は①借家人賠償責任、②什器・備品、③施設賠償の3点。
年額相場は小規模オフィス1〜2万円、物販2〜3万円、飲食店3〜5万円。2年契約一括が一般的です。
事業用法人契約での保証会社利用料は初回賃料の50〜100%(事業用は80〜100%が中心)、更新料は年1万円程度(定額)または賃料の0.3ヶ月分/年が業界相場。
民法改正(2020年4月)で個人連帯保証人の極度額設定が義務化されたことを契機に、事業用でも保証会社利用が実質的に標準化しました。
ビルが徴収する袖看板使用料は月3,000〜20,000円が標準。看板そのものの製作費は別途自社負担で、袖看板15〜25万円、壁面15〜35万円、屋上看板50〜200万円が目安。
中央区は東京都屋外広告物条例に基づき多くの看板で事前許可申請が必要で、特に銀座は「銀座デザイン協議会」のガイドライン審査が厳しい点に注意。
本店移転の登録免許税は同一法務局管轄内3万円/管轄外6万円。中央区・千代田区・港区は管轄が分かれるため、3区間移転は管轄外扱い。司法書士報酬3〜5万円を加えて管轄外で約10〜11万円。
移転日から2週間以内に申請しないと代表者個人に100万円以下の過料が科され得るので注意が必要です。
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| 項目 | 居住用(家賃20万円) | 事業用(中央区中堅オフィス・賃料20万円) |
|---|---|---|
| 敷金・保証金 | 20〜40万円(1〜2ヶ月) | 200万円(10ヶ月・中央区標準) |
| 礼金 | 0〜40万円(0〜2ヶ月) | 0〜60万円(0〜3ヶ月) |
| 仲介手数料 | 22万円 | 22万円 |
| 前家賃 | 20万円 | 20〜40万円 |
| 火災保険(2年) | 1.5〜2万円 | 2〜5万円 |
| 保証会社初回料 | 10〜20万円 | 16〜20万円 |
| 鍵交換/看板料等 | 2万円 | 1〜6万円 |
| 法人登記関連 | — | 10万円前後(移転時) |
| 合計 | 約100〜120万円(賃料5〜6ヶ月分) | 約240〜400万円(賃料12〜20ヶ月分) |
賃料20万円で居住用100〜120万円 vs 事業用240〜400万円、倍率2.4〜3.3倍。中央区の大型ビル(保証金20ヶ月)に当てはめると事業用は500万円超、倍率約5倍に達します。
中央区の中堅オフィスを想定し、坪単価レンジを2万円/2.75万円/3.5万円(共益費込み)と置いて試算します(保証金10ヶ月・礼金2ヶ月・仲介手数料1.1ヶ月・前家賃1ヶ月・火災保険3万円)。
| 坪単価 | 月額賃料 | 初期費用合計 |
|---|---|---|
| 20,000円 | 200,000 | 285万円 |
| 27,500円 | 275,000 | 391万円 |
| 35,000円 | 350,000 | 497万円 |
| 規模 | 月額賃料 | 初期費用合計 |
|---|---|---|
| 15坪×20,000円 | 300,000 | 426万円 |
| 20坪×27,500円 | 550,000 | 779万円 |
| 25坪×35,000円 | 875,000 | 1,237万円 |
| 規模 | 月額賃料 | 初期費用合計 |
|---|---|---|
| 20坪×20,000円 | 400,000 | 567万円 |
| 25坪×27,500円 | 687,500 | 972万円 |
| 30坪×35,000円 | 1,050,000 | 1,484万円 |
| 規模 | 月額賃料 | 初期費用合計 |
|---|---|---|
| 50坪×20,000円 | 1,000,000 | 1,413万円 |
| 65坪×27,500円 | 1,787,500 | 2,523万円 |
| 80坪×35,000円 | 2,800,000 | 3,951万円 |
| 坪単価 | 月額賃料 | 初期費用合計 |
|---|---|---|
| 20,000円 | 2,000,000 | 2,823万円 |
| 27,500円 | 2,750,000 | 3,881万円 |
| 35,000円 | 3,500,000 | 4,938万円 |
100坪・坪3.5万円クラスでは初期費用5,000万円が現実値。中央区の事業用物件契約は、金額感としては不動産売買に近い投資判断が必要です。
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事業用テナントで初期費用を圧縮する最大の手段は、保証金圧縮です。ただしここで重要な区別があります。
一般的な保証会社(全保連・ジェイリース・フォーシーズ・SFビルサポート等)は「貸主にとってのリスクヘッジ=家賃滞納時の代位弁済」が役割であり、保証金そのものは減額されません。民法改正(2020年4月)で個人連帯保証人の極度額設定が義務化されて以降、事業用でも保証会社加入は事実上の標準になりました。
ただし、現場の実態として注意すべき点があります。事業用テナント契約では、保証会社に加入しても、貸主から代表者個人を連帯保証人に求められるケースがほとんどです。「保証会社が連帯保証人代わり」と説明されることが多い一方、実際は保証会社加入+代表者連帯保証の二重保証が業界慣習として定着しているのが実情。借主からすると「連帯保証人にも入るのに、なぜ別途保証会社にも料金を払わなければならないのか」という疑問が残りますが、これは貸主側のリスクヘッジが二重化されているための業界構造です。
では保証金そのものを圧縮できる選択肢はあるのか——その答えが株式会社日商保「敷金半額くん」です。
本社は港区西新橋、設立2011年、資本金6億4,649万円。東急不動産・東京建物・関電不動産開発との取引実績を公表しており、都心3区での対応物件が最も多い保証会社の一つです。
日商保の本質的特徴は、一般的な家賃債務保証ではなく「敷金減額に特化した独自モデル」である点。主力商品「敷金半額くん」は、賃料8〜12ヶ月分の敷金を半額〜最大ゼロ円まで圧縮するモデルで、保証会社業界で唯一無二の存在です。
保証金10ヶ月→1〜5ヶ月に圧縮可能。30坪・賃料66万円の物件なら660万円→198万円、即時キャッシュアウトを約460万円圧縮できます。
| 保証会社 | 役割 | 保証金への影響 | 初回保証料 |
|---|---|---|---|
| 日商保(敷金半額くん) | 敷金減額特化 | 半額〜ゼロに圧縮可能 | 非公開(個別見積) |
| SFビルサポート | 家賃債務保証 | 減額なし | 賃料1ヶ月分(最低20万円) |
| 全保連 | 家賃債務保証 | 減額なし | 賃料の50〜100% |
| ジェイリース(事業用) | 家賃債務保証 | 減額なし | 賃料月額の100% |
| フォーシーズ | 家賃債務保証 | 減額なし | 最大80%(最低35,000円) |
つまり「保証会社で初期費用を圧縮したい」と考えるなら、選択肢は実質的に日商保「敷金半額くん」一択。それ以外の保証会社は連帯保証人の代替であって、初期費用そのものは下がりません。
メリット
※「連帯保証人不要」を謳う保証会社プランは存在しますが、事業用テナントの場合は貸主から代表者個人の連帯保証を別途求められるのが実態。日商保プラン上は連帯保証人不要でも、貸主の方針次第で代表者連帯保証は付くと考えておくのが現実的です。
デメリット
中央区物件での利用傾向としては、日本橋・八重洲・八丁堀・茅場町の中小オフィスビルは柔軟、銀座のハイグレード商業ビルや丸の内の旗艦ビルは消極的、というのが現場感覚です。
契約初期費用とは別建てで発生するコスト。見落とすと資金計画が破綻します。
| 隠れコスト | 相場(2025〜2026年) |
|---|---|
| 内装工事(オフィス・スケルトン) | 坪30〜80万円 |
| 内装工事(オフィス・居抜き) | 坪10〜35万円 |
| 内装工事(サロン・スケルトン) | 坪20〜40万円 |
| 看板製作費 | 15万〜35万円 |
| LAN配線工事 | 1人あたり5〜8万円 |
| 電源容量増設(B工事) | 30万〜100万円超 |
| オフィス家具・什器 | 1人あたり5〜30万円 |
| 複合機・OA機器 | 購入30〜100万円/リース月1.5〜3万円 |
| 引っ越し費用 | 1人あたり3〜5万円/坪5万円 |
| 原状回復(前オフィス退去) | 小規模坪3〜5万円、大型ビル坪6〜12万円 |
30坪・賃料66万円のスタートアップで試算すると、契約初期費用600〜800万円に加え、内装900〜2,400万円、什器50〜300万円、移転30万円が乗り、総額2,000万〜3,500万円の初期投資となります。
事業用テナント開設で最も多い失敗は、初期費用に資金を集中させすぎて運転資金が枯渇するパターンです。
公的ラインでは日本政策金融公庫の創業の手引きで3〜6ヶ月分の運転資金とされていますが、公庫の調査では黒字化までの平均期間が7ヶ月以上。BtoBは売掛回収まで30〜60日のタイムラグ、追加融資には3〜6ヶ月の経営実績が必要という現実を踏まえると、月額固定費の12ヶ月分を温存しておく経営判断は合理的です。
資金設計の鉄則は3層構造:
最大のレバー。保証金10ヶ月→1〜5ヶ月で数百万円のキャッシュアウトを圧縮できます。ただし重要な区別として、保証金を減額できるのは日商保「敷金半額くん」のみ。他の保証会社(全保連・ジェイリース等)は家賃債務保証が役割で、保証金は減額されません。
保証料は退去時に戻らないため、3〜5年スパンの総コストでは敷金を上回る場合があります。短期決戦のスタートアップは日商保、長期固定なら満額預入が判断軸です。
中央区は日本橋・茅場町・人形町・銀座・東日本橋エリアで居抜き流通が比較的活発。スケルトン坪30〜80万円が居抜きで坪10〜35万円まで下がり、30坪なら450万〜1,350万円の内装費削減が見込めます。
注意点は造作譲渡料(事務所系0〜50万円、サロン30〜150万円)と譲渡承諾料(家賃2〜3ヶ月分または譲渡代金の10%)が別途必要なこと。
礼金は法的根拠のない慣習料金。空室期間3ヶ月以上の物件、築古中小ビル、5〜8月の閑散期は交渉成功率が高い。礼金2ヶ月→1ヶ月の減額は比較的通りやすく、賃料値引きより応じてもらいやすい傾向(賃料を一度下げると上げにくいため貸主が嫌がる)。
※フリーレント交渉の詳細はこちらの記事で深掘り解説しています。
管理会社経由の物件は規定が固いですが、オーナー直物件・個人オーナー物件では保証金を2〜3回に分割する交渉が成立する場合があります。短期解約違約金(2年未満解約時に違約金発生)の特約と引き換えに認められるケースが多い。
10〜30坪の小規模出店なら、セットアップ済オフィスは敷金3〜6ヶ月で家具・通信込みの物件が都心5区で2024〜2026年に約1.5倍に増加。サロン・士業・1人会社では選択肢になります。
※セットアップvs自社内装の比較はこちらの記事で詳しく解説しています。
保証会社利用ではなく、貸主と直接交渉して保証金そのものを減額してもらう方法も実は有効です。背景は、保証金の「預かり金」性格にあります。
貸主の視点で整理すると、礼金は「売上(=減額すれば直接の損失)」、賃料減額は「毎月のキャッシュフロー減(=長期影響大)」ですが、保証金は預かるだけで貸主の損失にはなりません。預ける金額が10ヶ月→7ヶ月に下がっても、毎月の家賃収入は変わらず、解約時の原状回復・滞納リスクをカバーできる金額が確保できれば貸主は応じやすい——これが交渉余地の正体です。
特に借主の与信が良い場合(上場企業・大手の子会社、決算3期黒字、業歴10年以上、業界大手等)、「保証金を下げてでも入居してほしい」優良テナントとして扱われ、保証金10ヶ月→6〜8ヶ月への減額に応じる貸主は実際に多くいます。
「保証金は決まったもの」と思い込まず、与信を武器に交渉する。これは日商保活用と並ぶ、知る人ぞ知る初期費用圧縮の打ち手です。
| 項目 | 月数 | 賃料20万円 | 賃料50万円 | 賃料100万円 |
|---|---|---|---|---|
| 保証金(中央区標準) | 10ヶ月 | 200万円 | 500万円 | 1,000万円 |
| 礼金(典型) | 2ヶ月 | 40万円 | 100万円 | 200万円 |
| 仲介手数料 | 1.1ヶ月 | 22万円 | 55万円 | 110万円 |
| 前家賃 | 1ヶ月 | 20万円 | 50万円 | 100万円 |
| 火災保険(2年) | — | 2〜5万円 | 3〜7万円 | 5〜10万円 |
| 保証会社初回料 | 0.5〜1ヶ月 | 10〜20万円 | 25〜50万円 | 50〜100万円 |
| 看板使用料・登記関連 | — | 約11〜16万円 | 約11〜16万円 | 約12〜20万円 |
| 合計(標準) | 14〜15ヶ月分 | 約305〜325万円 | 約744〜778万円 | 約1,485〜1,540万円 |
| 保証金20ヶ月の大型ビル | 24〜25ヶ月分 | 約505〜525万円 | 約1,244〜1,278万円 | 約2,485〜2,540万円 |
中央区で事業用テナントを借りる初期費用は、賃料20万円規模でも240〜400万円、100坪クラスでは3,000〜5,000万円に達します。居住用の2.4〜5倍という金額差の正体は、解約予告6ヶ月+原状回復6ヶ月=保証金12ヶ月分の理論値、そして店舗総合保険の強制加入にありました。
実装的示唆は明確です。保証会社・居抜き・礼金交渉に加え、保証金の直接交渉まで含めて駆使すれば、初期費用の50%以上を圧縮できる余地がある。日商保「敷金半額くん」のような敷金減額型保証(業界唯一)は、創業期・スタートアップにとっては「資金調達の代替手段」とすら言える経済的インパクトを持ちます。
一方で、保証料の継続発生・更新料・ビル側承諾の必要性といったトレードオフを正確に理解しないと、3年後に「敷金預けたほうが安かった」という結果に陥ります。
賃料を下げる交渉ではなく、初期費用の構造を読み解く交渉が、これからの中央区出店の勝ち筋です。
初期費用以外の事業用契約の実務知識は、以下の記事も併せてご覧ください。
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