2025.11.06 お役立ち情報
「事業用の物件を借りるのって、居住用とそんなに違うの?」
これから開業を検討している方、本社初の事業所を構える方、多店舗展開で新しいエリアに出店する方——事業用の不動産契約に踏み出すとき、ほとんどの方が居住用との違いに戸惑います。
そして残念ながら、その「分からなさ」につけ込まれる場面も、現場では存在します。
この記事では、中央区(日本橋・茅場町・人形町・八丁堀)を中心に事業用物件の仲介を行っているnodomaruが、居住用と事業用の違いを業界の内側から正直に解説します。包み隠さず、リアルな現状を開示します。
![]()
細かい違いはたくさんありますが、最初に押さえてほしいのはこの3点です。
| 項目 | 居住用 | 事業用 |
|---|---|---|
| 金額(敷金・保証金) | 家賃1〜2ヶ月 | 賃料6〜12ヶ月 |
| 契約期間 | 2年(普通借家中心) | 2〜3年(定期借家比率30〜40%) |
| 原状回復責任 | 費用は最低限 ・クリーニング費 ・エアコン清掃費 | 原則、事務所仕様 or スケルトン戻し (借主負担が広い) |
| 契約開始までの期間 | 1〜3週間 | 1〜3ヶ月 |
| 必要書類 | 本人確認・収入証明 | 登記簿・決算書2〜3期・印鑑証明など |
事業用は初期費用が大きく、契約期間も長く、退去時の負担も重い。だからこそ、契約前に相場感と業界構造を理解しておくことが、後々の数百万円の差につながります。
居住用の賃貸契約は、ほとんどが普通借家契約です。借主の更新意思があれば原則更新され、貸主から一方的に契約終了を通告するのは難しい(正当事由が必要)構造になっています。
一方、中央区の事業用物件では、定期借家契約の比率が体感で30〜40%あります。
定期借家の特徴:
貸主側のメリットとして、ビルの建替え計画・テナント入替え・賃料改定の自由度が高くなるからです。
借主目線では、「契約期間満了で出ていかなければならないリスク」を理解した上で契約する必要があります。長期で事業を構える場合、定期借家か普通借家かの確認は最優先事項です。
事業用の保証金(敷金)は、居住用の数倍が当たり前です。中央区の実態は以下の通りです。
| 物件タイプ | 保証金の相場 | 償却 |
|---|---|---|
| マンションタイプ(オフィス使用可) | 1〜2ヶ月 | 物件次第 |
| オフィスビル系 | 6〜12ヶ月 | なし〜2ヶ月程度 |
| 店舗(居抜き・スケルトン) | 6〜12ヶ月 | なし〜2ヶ月程度 |
保証金が高額になる理由は主に3つです。
事業用契約には「償却」という条項がよく入ります。これは保証金のうち一定額(1〜2ヶ月分など)が、退去時に返還されない取り決めです。
居住用の「礼金」に近い性質ですが、契約書上は「敷引き」「償却」と表現されます。契約書を読まないと気づかないのが落とし穴。中央区では償却なしの物件もありますが、2ヶ月程度の償却が設定されている物件も珍しくありません。
契約前に必ず確認しましょう。
![]()
居住用の原状回復は、国交省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」が事実上の標準です。経年劣化や通常使用による消耗は貸主負担とされ、借主は故意・過失による損傷の補修のみを負います。
事業用は、ほとんどの契約で原状回復=原則事務所仕様orスケルトン戻し(内装を全て撤去して引き渡す)が前提です。経年劣化分も借主負担になることが一般的で、居住用とは責任範囲が大きく違います。
| 物件タイプ | 原状回復費の目安 |
|---|---|
| オフィス | 坪あたり50,000〜70,000円 |
| 飲食店スケルトン戻し | 規模・設備により大きく変動(一般化困難) |
10坪オフィスなら50万〜70万円、20坪なら100万〜140万円が目安です。契約時にこの金額が後から発生することを織り込んでおく必要があります。
ここはあえて正直にお伝えします。
原状回復工事は、躯体(建物の構造体)に影響が出る可能性があるため、原則として「貸主指定の工事会社」が施工することになっています。これは構造的に合理的な仕組みです。
しかし、この構造には構造上のリスクもあります。貸主と工事会社が結託して、相場より高い見積もりを請求するケースがごく稀ですが存在します。
原状回復工事の相場感を把握している事業者は多くありません。「言われた金額をそのまま払う」状態だと、本来不要なコストを負担する可能性があります。
nodomaruからお伝えしたい対策は次の通りです。
すべてのケースで不当請求があるわけではありません。むしろ多くは適正です。ただ、「相場を知らない事業者は不利になりうる」という業界構造を知っているかどうかで、退去時の負担は大きく変わります。
![]()
居住用は申込→審査→契約までが早く、最短で1週間ほど、長くても2-3週間程度です。
事業用は、契約までに1〜3ヶ月を見ておく必要があります。
※厳密に言うと、申込〜契約締結までは居住用とさほど変わらないスケジュール感ですが、
現在のオフィスや店舗の退去を考えると居住用よりも移転(引越し)が容易ではないため、
契約開始日は少し前広に設定することができます。
典型的な流れ:
※急ぐ場合でも、最低3〜4週間は見ておくべきです。「来月オープン」を逆算するなら、物件探しは3ヶ月前から動き始めるのが現実的です。
事業用は居住用と比べて、フリーレント(賃料無料期間)の交渉余地が大きいのが特徴です。
事業用物件では、内装工事期間・営業開始までの準備期間を考慮して、1〜3ヶ月のフリーレントを引き出せるケースは珍しくありません。条件交渉は仲介担当に遠慮なく相談すべきポイントです。
![]()
| 場面 | 必要書類 |
|---|---|
| 申込時 | 会社謄本コピー/決算書2〜3期分/代表者身分証 |
| 契約時 | 会社謄本原本/会社の印鑑証明書/代表者の印鑑証明 |
| 追加で求められる場合 | 事業計画書(期が浅い・決算未提出・開業時) |
個人名義での契約になるため、収入証明(確定申告書の写しなど)が重要になります。法人と比べて与信が見えにくいため、保証会社利用や連帯保証人を求められるケースが多くなります。
「これから開業します」「設立して半年です」というケースでは、決算書が出せないため、事業計画書での与信判断になります。
事業計画書には以下の要素を盛り込むのが一般的です:
この計画書の出来栄えで審査結果が変わることもあるため、丁寧に作る価値があります。
事業用は「この物件で、その業種は営業できるか」を確認する必要があります。
業種ごとに必要な設備条件が異なります(後述の業種別ポイント参照)。
居住用と比べて保険料が高くなるのが一般的です。業種によっては引受拒否される保険会社もあるため、契約条件として早めに確認しましょう。
事業用でも保証会社利用が一般化しています。代表者個人の連帯保証を求められるケースは依然として多く、法人と個人の責任が分離されない点に注意が必要です。
飲食店オーナーは比較的詳しい方が多いですが、それでも以下の落とし穴があります。
オフィスは「箱の使い方」で意外な制約が出ます。
クリニックは業種としては要件が比較的緩いですが、給排水追加工事(診療科目によって)と床荷重(重量機器設置時)の確認が必要です。
![]()
| グレード | 坪単価 | 10坪月額 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 安め | 13,000〜15,000円 | 13万〜15万円 | 古い雑居ビル系 |
| 相場 | 18,000〜22,000円 | 18万〜22万円 | 標準的なオフィスビル |
| 立地 | 坪単価 | 10坪月額 |
|---|---|---|
| 路面店 | 20,000〜30,000円 | 20万〜30万円 |
| 空中階 | 15,000〜20,000円 | 15万〜20万円 |
飲食居抜きで前テナントの設備を引き継ぐ場合の造作譲渡費は、一般的に100〜500万円程度。ただし、設備内容(厨房機器のグレード・経年・空調・客席設備等)で大きく変動します。「相場」より、個別見積もりでの精査が重要です。
※相場は時期や物件状況で変動します。最新情報は仲介担当にご確認ください。
事業用の物件探しで、貸主・仲介サイドから次のような言葉をよく聞きます。
これらは時に事実ですが、貸主は構造的に「希少性を訴えて、その物件で決めてもらいたい」立場にあります。本当に問い合わせが多い物件かどうかは、信頼できる仲介担当に率直に聞くのが正解です。
過剰に反応して焦って決断すると、後から「もっと比較すればよかった」となることがあります。事業用物件の意思決定は数年単位の影響が出るので、1〜2週間の比較検討は許容すべき時間です。
![]()
A. 借りられます。ただし、法人と比べて与信判断材料が少ないため、収入証明(確定申告書)や保証会社利用、連帯保証人を求められるケースが多くなります。事業計画書を併せて提出すると、審査通過率が上がります。
A. 物件によります。分譲マンションの場合は管理規約で事業利用が禁止されているケースが多く、賃貸マンションでも貸主の許可が必要です。無断で事業利用すると契約違反になります。SOHO可・事業利用可の物件を選ぶようにしましょう。
A. 償却分を除いて返還されますが、原状回復費用が差し引かれます。償却条項がなければ、原状回復費を控除した残額が返還されます。原状回復費がいくらになるかが、実質的な返還額を左右します。
A. 契約書の「原状回復条項」によります。事業用は原則事務所仕様やスケルトン戻しが多いですが、契約書に明記された範囲が全てです。契約時に必ず原状回復の範囲(経年劣化分の扱い・自然損耗の扱い)を確認しておきましょう。
A. エリア・規模・業種により異なります。10坪前後の小規模オフィスは流通量があり、探しやすい部類です。一方、飲食店向けの路面店居抜きは出物が限られ、タイミング次第です。具体的な希望条件があれば、現状の市況含めてご相談ください。
事業用と居住用の違いを改めて整理します。
事業用の物件探しは、初期費用も大きく、契約期間も長く、退去時の負担も重い。正しい知識を持って臨めば、数百万円単位の差を生むこともあります。
nodomaruは、相場感も業界の構造も、包み隠さずお伝えしています。それが私たちの考える「正直」だからです。
nodomaruは、申込や契約を煽ったり、事業者さまに高い金額を提示したり、「今決めないと」と焦らせることを絶対にしません。
だからこそ、
そんな段階のご相談こそ、歓迎しています。
私たちが提供できるのは、不動産プロセスにおける正直な情報と、対等な相談相手としての立ち位置です。
縁ある人に、のどかな人生を。
株式会社nodomaru(のどまる)